
この話は、君と僕だけの秘密だよ。
本当はあまり話したくないんだ。
ただ君が、この街に来るというから特別にね。
楽しい夜だった。
あの夜には、素晴らしい出会いがあったんだ。
なに、女かって?
女じゃないよ。
僕は一人だっだ。
薄暗い路地を一人で歩いていたんだ。
もちろん飲んでいたよ。
近所の居酒屋に入って、生ビールを3杯飲んだ。
その後店を出て、あてもなく歩いていたんだよ。
確か午後10時くらいだっただろうか。
まだ帰るには早すぎるという思いもあった。それに眠くもなかった。
いや、正確には、僕はこの街での僕の居場所を探していたんだ。
知っている店はなかった。
当たり前だよね。その頃の僕は、この街に越して来たばかりだったからね。
近所の居酒屋で焼き鳥を食べながら、ビールを飲むのもいいと思う。
ただ、違うんだ。
僕の存在を認知してくれる場所。
難しいことをいうつもりはないよ。
簡単に言うと、仲間に会える場所。
お酒が好きな仲間と飲んで語らえる。そんな場所を探していたんだ。
その日、僕は運が良かったんだ。
歩いているうちに、ある店を見つけたんだ。
木張りの外装に小さな看板が出ていて、バーと書いてある。
バーというと、知らない店は入りにくいよね。
僕だってそうさ。
でも、そこは違ったんだ。
何が違うのかって?
それは僕の持ち合わせている言葉では説明しづらいんだ。
それは君が直接行って確かめてみたほうがいい。
すぐに、扉を開いて店に入ったさ。
あとは、最初に言った通り、最高に楽しかった。
君がこの街に来るのなら話しておきたい。そう思っただけだよ。
行ってみたいんだろ?
連れて行って欲しい。君の顔にはそう書いてあるよ。
でもね、君自身の足で探すのが一番いいと思うんだ。何て言ったって秘密なんだから。
あっ、大切なことを言い忘れていたよ。
この街で君がすることはまず、赤い扉のバーを探すことだね。

